ジャックナイフと言われた千原ジュニア氏

千原ジュニア氏は、
最近の視聴者からはどう思われているのでしょうか。

「ロンドンハーツでイジられながら、
すべらない話、IPPONグランプリに出演したりしてる、
MCのうまい売れてる芸人さん」

でしょうか。

確かにそれは間違ってないです。

しかし僕は、最近のジュニアさんに対して、不服なことがあります。

それはいつからか「天才」がイジられる要素になってしまっていることです。

いつからか、というか、ウソでしょ?ジュニア~USJ~からなのですが。

最近の方で、千原ジュニアさんの天才性を知らないという方は、この二本でも観ればわかります。

そんな中、先日の「ざっくりハイタッチ」(テレビ東京)で、
その天才性が久しぶりにいかんなく発揮されていました。

アドリブで繰ったコントを作り出す

企画は…ちょっと企画からして
お笑いレベルの高い感じで、きっちり説明するのが難しいのですが、
「単独ライブ終わりの楽屋に、誰かがやってきて話す」
という設定。

まずは、
客席で観ていたという体のアンガールズの田中氏が入ってくる。

ジュニア氏「昼やから、ちょっと下っぽいのはウケへんな」
田中氏「そーなんすよね」
ジュニア氏「3本目なんか全然ウケへんかったもん」
田中氏「ちょっときつめのね」
ジュニア氏「大人のおもちゃのチャチャチャ
田中氏「あ~。まあ音楽に乗せてもね」

ここでちょっと、
企画の主旨的なものがわかる。
単独ライブの終わりに、
客席で観ていた芸人が来る…というあるあるが一つ。
…まあ、私は元芸人なのでわかるのですが、
この感じがどれだけ伝わるか謎ですが。

そしてもう一つが、
即興でコントを作るということ。

そこに、壁役となるゲストがどれだけ
いいアシストができるかが、この企画の笑いのポイントでしょう。

ジュニア氏「あんなに黒人ダンサー出てくる思えへんかったやろ」
田中氏「どうやってキャスティングしたんですか?」
ジュニア氏「吉本に言って『悪いけど40人集めてくれ』って言って。
もうみんな先行ったけど、一緒やからね、楽屋」

ジュニア氏「どれが面白かった?」
田中氏「僕はやっぱり二本目ですかね。刑事の…」
ジュニア氏「刑事のね。返り血…返り血刑事」
田中氏「返り血を…手がかりに犯人を見つけていくという」
ジュニア氏「あんなベタな『そっちのケッコンかい』が…
返り血刑事が最後結婚するやん。
『そっちのケッコンかい』がそんなウケる思えへんかったから」

黒人ダンサーは「こんなコントは嫌だ」というボケだとして、
返り血刑事は本当にコントになりそうですよね。

田中氏「オープニングもすごかったですよね…裸で…」
ジュニア氏「あれも、ギリギリ何なめでっていうので、
ギリギリ股間見せへんように、
あれ1カメショーやからな」
田中氏「えー!」
ジュニア氏「ずーっと1カメで、
見えへんようにやって」
田中氏「花から花瓶に移って」
ジュニア氏「三角コーン行って。
ほいでプリウスと並走して

田中氏のざっくりとしたパスを、
完璧にシュートした。すごい。

田中氏「最後のコントとかお客さん泣いてましたよ」
ジュニア氏「両手の小指落としてるヤクザが手話でやるから、
意味が全然変わって。
最終的に『お前ぶっ殺す』って言ってんねんけど
『愛してる』ってなってるっていう」

普通にコントになりそうなクオリティのものが、アドリブでポンポン出るからすごい。
売れる人とはこうなんです。

そしてなんと、全てのコントは「ハンド」というキーワードでつながっていた。

ダイノジさんの単独ライブ「俺道」を思い出しました。

即興エンタ芸炸裂

そしてバイきんぐの小峠氏登場。

小峠氏「え、じゃあサッカーのやつ(コント)も(ハンドだった)?」
ジュニア氏「そうそう、スーツ交換するやつ」

この間が早い。クイックレスポンスだ。

ジュニア氏「ベンチコートとスーツを交換するっていう。
引っ張りすぎやけどな」
小峠氏「あと着替えるのに尺取りすぎでしょ」

小峠氏は、田中氏よりも自分でシュートを打ってくる。
他事務所ながらジュニア軍団に入っただけある頭の回転の速さだ。

小峠氏「あれ好きでしたよ。
リズムネタ。
意外でした」
ジュニア氏「挑戦してみようっていうか…」
小峠氏「ちょっとなんか…
アクセルホッパー色が強いっていうか…」
ジュニア氏「似てる?
シャッタチャンスシャッタチャンスシャッターチャンス!」
田中氏「まあやっぱ…パンパンスパパンとどうしても近くなるっていうか」
小峠氏「そんなことは無いと思うんですけど、少しだけ…」
ジュニア氏「イメージはそっからじゃないねんけど。
やっぱどっかに入ってたんやろな」

そして本意気のシャッターチャンスネタに。

ジュニア氏「おいおいアレだって?
矢口真里が旦那がいない間に男を家に連れ込んでたんだって?
シャッタチャンスシャッタチャンスシャッターチャンス

これは紛れもなく、
2003年~2010年に猛威をふるい、
お笑いブームの立役者ともなった

エンタ芸

だ。

リズムに乗ったあるあるネタでさらにネタにテロップも出し、
そのわかりやすさで裾野を広げた功績もあるが、
多数の芸人を濃いお笑いファンから「つまらない」と認定させてしまった罪もある。

ジュニア氏はエドはるみ氏といい、エンタ芸を愛している節がある。
ボケはまだ続く。

小峠氏「後半でしたっけ…ゆるキャラ。
あれも…だいぶお金かかってるんじゃないですか?」
ジュニア氏「にっぽん君な。
国のゆるキャラ作ろうと思って」
小峠氏「あー…そうですよね」
ジュニア氏「にっぽん君とペルーちゃん」
小峠氏「ペルーちゃん可愛かったですね。
あれキーホルダーとかもだいぶ売れてたんじゃないですか?」
ジュニア氏「アフガニスオが一番売れんねん
小峠氏「あはははは」

これは面白い。小峠氏も思わず笑ってしまった。

ジュニア氏「アフガニス男が、あんな怖いのに、
あれが逆に可愛いみたいになって。
あれのストラップがめちゃめちゃ売れてん」

単独ライブあるある、ゆるキャラあるあるですね。

ジュニア氏「バルト三国んが全然売れへんねん」

ウケたところで、さらにシュールなのを放り込むのも、

ジュニア氏の天才たるゆえんだ。

立体的な視点

ジュニア氏「あれはもっとウケる思てんな。『笑点』」

単独ライブでメタ笑点みたいなコントはありがちだが…

ジュニア氏「俺がうまいこと言いすぎて、座布団積み上げすぎて、
天井ぶち抜けるっていうやつな。
後楽園ホール突き破るっていう」
小峠氏「だいぶセットも大がかりでしたし。
ただ、単純に見てて怖かったですよ。
あんだけ座布団が連なってるの。
ジュニアさん見えてないかもしれないですけど、
下相当ぐらついてましたから」
ジュニア氏「でもあれええ話やったやろ。
上まで行きすぎると、挙手してるのに全然当ててもらわれへんていう。
天才の悲しさみたいなのが伝わったらいいかなと思って

ここに、千原ジュニア氏のメッセージの全てが詰まっていた。

天才と言われながらも、

女性ホルモン分泌バラエティー 全力☆が〜る
パテナの神様!
快脳!マジかるハテナ

では、
番組のことを考え、おさえた笑いをやる。
器用なMCになる。
天高い笑いは万人には必要とされていない。

温泉でもファミレスでも大喜利をやる
お笑い中毒のジュニア氏にはストレスもあったろう。

売れる自分と面白い自分との葛藤は、天才にしかわからないのかもしれない。

たまにでいい。
この企画のような、
後楽園ホールをぶち破る芸を魅せてほしい。

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元孤高のコーイチロー。元斉藤ギガバイト。元東京NSC7期生の売れない芸人。R-1GP2011一回戦突破。フライデーナイトライブ二位。『格闘技LOVE』『元売れない芸人の独り言』管理人。ストリートシュガーリンダ『お笑い芸人たちのあんなことこんなこと』執筆。